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男性ホルモン補充療法と前立腺がんのリスクについて


「前立腺がんは男性ホルモンが多いとなりやすいのではないか」と考えている人が多いようです。しかし、そうではありません。むしろ男性ホルモンが少なくなると、悪さをしないがんが、死につながるがんに変わってしまうこともあるのです。詳しく説明します。

Blood sample for testosterone hormone test

■男性ホルモン補充療法の効果

ホルモンを補充する、というと、なんだか普通ではない治療のように感じたり、副作用が心配になったりする人もいるのではないでしょうか。特に、治療に使用する男性ホルモンは、ドーピング禁止薬物に指定されているイメージが強く、ネガティブなイメージを持っている人も多いかもしれないですね。確かに日本ではホルモン補充治療の普及率は低く、数パーセントしかありませんが、国際的には男性ホルモンの減少に伴う更年期障害の治療のスタンダードになりつつあり、普及しています。ただし、気を付けなければならないのは、専門機関医師の処方ではなく、ネットや怪しげなルートで流通するテストステロンの経口薬の存在です。これらの薬剤は肝臓の機能の悪化などリスクを負うことになりかねませんので、必ず医師の処方によるテストステロン製剤を使用するようにしてください。テストステロン製剤はホルモンそのものですから、使用量を守って服用すれば重大な副作用はありません。その一方で、長い間使用すると、外からの投与に頼ってしまい自分の身体がテストステロンを作ろうとしなくなる場合が考えられます。医師と相談し、自分にあった投与量と治療期間を見つけることが肝心です。男性ホルモン補充療法の方法は経口剤、注射、皮膚吸収剤がありますが、日本国内の保険適用は注射のみとなっています。

◎男性の更年期障害(LOH症候群)の改善

疲れやすくなったり、眠れない状態が続いたり、集中力がなくなったり、倦怠感が続くという症状に覚えがある人は、テストステロンの低下による更年期障害の可能性があります。血中のテストステロン値を測り、目安となる値を下回った患者さんに投与を続けると、3~4ヶ月後には改善がみられ、1年後には元気な時の5割~9割まで症状が回復したというデータが報告されています。

◎うつの改善

長く続くうつ病で、それまでに心療内科や精神科にかかっていても改善がみられない重度のうつ患者さんが、泌尿器科を受診されることがあります。そういった患者さんはテストステロンの値が一様に低く、テストステロンを注射するホルモン補充療法を開始すると、症状が改善するケースが少なくありません。

 

■前立腺がんと男性ホルモンの関係

前立腺がんはテストステロンで少しずつ大きくなります。従って睾丸を切除し、テストステロンが出ないようにすると、がんは急速に衰弱していきます。このことから前立腺がんと男性ホルモンテストステロンの関係は、誤解されがちですが、重要なのはテストステロンが高いから前立腺がんになりやすいわけではないということです。

◎前立腺がんの発生原因は男性ホルモンではない

前立腺がんの治療法として男性ホルモンの分泌を下げるホルモン療法があることから、勘違いされがちですが、テストステロン自体は前立腺がんの原因ではありません。前立腺がん発生時の幹細胞にはテストステロンを取り入れるレセプターが存在せず、前立腺がん自体はテストステロンとは関係のないところでできることがわかっています。従って、男性更年期障害の治療で男性ホルモン補充療法をしている人も「前立腺がんになるリスクが増えるのではないか」という心配はしなくて大丈夫です。前立腺がんが発生するのはテストステロンが多いからではありません。また、発生してしまった前立腺がんはテストステロンの刺激で大きくなりますが、同時に前立腺がんが悪化しないように制御する役割も担っていることがわかってきました。

◎男性ホルモンは「いいがん」が「悪いがん」になるのを防ぐ

テストステロン値が高い人は、比較的「いいがん」である場合が多いといわれています。また、男性ホルモンは、命を脅かさない「いいがん」から命を脅かす「悪いがん」になるのを防いでくれるとも考えられています。前立腺がんの治療中でない人にとっては、ホルモンレベルが高いことは長寿につながるバロメーターでもあります。テストステロン値が高い人は心筋梗塞や脳梗塞などの大きな病気になりにくく、長生きする傾向にあるといえるでしょう。

◎男性ホルモンは前立腺がんを大きくするリスクがある

前立腺がんは発症すると男性ホルモンの刺激によって増殖します。そのため、男性ホルモンの分泌や働きを抑制し、がんの増殖を防ごうとする「ホルモン療法」がとられるようになると、がんは急速に衰弱していきます。反対に、前立腺がんがあるのに男性ホルモンを投与してしまうと、前立腺がんを進行させてしまうリスクがあります。

 

■男性ホルモン補充療法を受けられる人・受けられない人

男性ホルモン補充治療は前立腺がんでなければ受けられます。補充療法を始める前には、前立腺がんのチェックをPSAと触診で行う必要があります。また、治療中も定期的にチェックが必要となります。

男性ホルモン投与によって、前立腺がんになる確率が上がることはありません。更年期障害やうつ病で悩んでいる患者さんは、安心して男性ホルモン補充療法を受けていただいて大丈夫です。ただしその際には「悪い」前立腺がんがないかどうか、必ず検査をし、ホルモン投与期間中も継続して前立腺がんに対する注意が必要になってきます。

 

■前立腺がん治療後の男性ホルモン補充療法

前立腺がんで男性ホルモンが低下し、男性更年期障害がある場合は、手術などで前立腺がんの治療をしっかり行った後に慎重に男性ホルモン補充療法を行うことがあります。ただし悪性度の高いがんについては、治療後早急にホルモン補充療法を行うことは勧められません。


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