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前立腺がんのロボット手術「ダヴィンチ」とは


前立腺がんの手術法の一つであるロボット支援手術には「ダヴィンチ」 と呼ばれる手術支援装置を使って行われます。その方法やメリットを詳しく解説しましょう。

前立腺がんロボット支援手術:ダヴィンチ

ダヴィンチとは

近年外科手術の領域ではロボット支援法が広がっています。中でも最も注目されているのがダヴィンチと呼ばれる手術支援装置です。手術台から離れたコンソールの中から、モニターの映像を見ながら、両手と両足を使い、遠隔操作で手術をするものです。患者への肉体的な負担が少ない低侵襲の術式として導入された従来の腹腔鏡手術より精密かつ繊細な動きが可能になりました。ミリ単位の操作をいとも簡単にこなすことができ、手術の精度は格段に高まりました。特に前立腺がんの手術において、ダヴィンチの登場は革新的な意味を持ちます。従来の手術では、前立腺がんを切除する際に、周囲の勃起神経を犠牲にすることは仕方のないことだとされてきました。しかし、ダヴィンチを使えば非常に細かい作業も可能となるため、勃起神経を温存したまま、がん組織だけを安全かつ確実に切除できるようになったのです。

手術を受けるための条件

従来、前立腺がんで手術をする場合、対象年齢は「65歳以下」「15年以上生存が見込まれる」という暗黙のルールがありました。ところが、ダヴィンチの登場により、射精を除く性機能を温存したまま、患者の肉体的な負担を最小限に抑えることができるようになり、手術の対象年齢は大きく高まりました。今では80歳でも手術を受けられるケースが増えています。ただし、ダヴィンチであっても、手術を受けるためには、摘出(全摘出を含む)で根治が見込めることに加え、いくつかの条件があります。すでに開腹により下腹部の手術を受けた方、心臓疾患がある方、緑内障がある方、高度な肥満がある方などは実施できない場合があります。

メリット

ダヴィンチ手術によるメリットは以下のようなものが挙げられます。

周囲の細胞を傷つけず、がん細胞だけを取り除くことが可能となった
前立腺は大きさも形も「クルミ」に似ています。そして、それを取り囲むように勃起の神経が「タケノコの皮」のように覆っています。従来の手術では、勃起神経を傷めることなく、がん組織だけをきれいに切除することは至難の業でした。
勃起機能が残せる可能性が高い
従来の手術のイメージから、今でも「前立腺がんの手術をしたら二度と勃起できなくなる」と思っている人は少なくありません。非常に細かい作業も可能なダヴィンチを使えば、勃起機能を残せることが当たり前となりました。前立腺の摘出はパイプカットと同じ状況なので、射精はできなくなります。これはダヴィンチにおいても変わりありませんが、「射精感」は残すことができます。
回復までの期間が短い
手術による傷も最小限で肉体的負担が少ないので、開腹手術に比べ入院日数も少し短くてすみます。また、退院後も、3ヶ月で83%の方が機能回復しているなど回復までの期間が短いのも特徴です。
手術後の合併症が少ない
尿道を長く残したり、尿道括約筋を傷つけずに手術ができるため、手術後の患者の約3分の2は尿失禁がありません。多少あっても、3ヶ月程度でおさまります。

デメリット

メリットが多いダヴィンチですが、デメリットもいくつかあります。

脳や目、心臓に病気がある方には使えない
術中に手術台を長時間傾けるため、悪影響を及ぼす危険性があるからです。ただし、緑内障については、先に緑内障の治療を済ませてしまえばダヴィンチも適応となります。
尿道狭窄
膀胱と尿道の吻合部分が狭くなり排尿困難感が強くなることがあります。排尿困難が高度な場合は内視鏡的に広げる場合もあります。
創ヘルニア
傷の下の筋膜が緩んで、腸が皮膚のすぐ下に出てくる場合があります。その場合再手術が必要になることがあります。健康保険の適用は前立腺がんの全摘出のみダヴィンチでその他の部位の手術を行う場合、医療費が高額になります。

トピックス

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手術する側の医師から見て、ダヴィンチによる手術の唯一のデメリットは「感触がないこと」だといわれています。非常に繊細な組織をつまむとき、手元の機械では実際の感触が得られないので、その操作の加減に難しさを感じる外科医は多いといいます。ところが、ある新人医師はダヴィンチで手術をすることを目的に泌尿器科を選んだそうです。彼は医師としては新人ですが、実はゲームの世界では非常に名の知れた人物で、天性の機械操作技術を持っているのです。手術をするうえで必要な解剖や病理の知識を熟知しなければならないのは当然ですが、多くの外科医が直面する感触のなさをクリアできる素質を持った人物は、これからの医療界において貴重な存在となりえるかもしれません。

ダヴィンチ 法による手術の症例数はどのくらい?

ダヴィンチは90年代にアメリカで開発され、99年に運用が開始されました。日本国内においては、2009年に医療機器としての認証を受け、国内医療機関での運用が開始されました。2012年4月に前立腺がんの全摘出手術が保険適用となったことで、新たな治療法として注目されています。日本ロボット外科学会のホームページによると、2014年9月末の時点で、国内の導入実績は188台、症例は年間15,662件となっています。現在多くの病院では全摘手術はすねてロボット手術ダヴィンチで行われています。症例数が多い病院ではダヴィンチを使った手術が広がる一方で、IMRTなどの先端放射線治療や高密度焦点式超音波治療(HIFU)など患者にあわせて選択肢を幅広く揃えており、症状の進行具合や患者のライフスタイルを考慮して治療法を選ぶことができる環境が整っています。


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