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ゴナックスでの治療と副作用~各種ホルモン治療薬との違いとは~


ゴナックスはGnRHアンタゴニストという、性腺刺激ホルモン放出ホルモンを阻害するホルモン療法の薬です。GnRHに作用する薬にはリュープリンやゾラデックスもありますが、メカニズムや副作用が異なります。カソデックスの併用など詳しく説明します。

注射器3本と薬2つ

※本来GnRHとLHRHは同一のものですが、この記事においては「アンタゴニスト」と「アゴニスト」の読み間違いを防ぐ目的で
ゴナックス→GnRHアンタゴニスト
リュープリン、ゾラデックス→LHRHアゴニスト
として表記していきます。

ゴナックスとはどのような薬か

ゴナックスとは前立腺がん治療薬で初のGnRHアンタゴニストです。脳下垂体に作用し、性腺刺激を抑えることでテストステロン(男性ホルモン)の分泌を抑制するホルモン療法の注射薬で、世界60か国以上で使用されています。
用法・用量は「初回240mgを腹部へ2カ所、(1カ所につき120mgずつ)皮下投与。2回目以降は、80mgを維持量として、初回投与4週間後より腹部1カ所に皮下投与。投与は4週間間隔で繰り返す」となっています。

◎すぐに効果が出るのが特徴

GnRHとは脳の視床下部で産生されるホルモンであり、脳の下垂体に存在するGnRH受容体に結合することで、男性ホルモンの一つであるテストステロンの産生に関わっています。男性機能維持のためにテストステロンは必要なホルモンです。しかし前立腺がんにおいては、がん細胞を増殖・促進させてしまいます。

これに対してGnRHアンタゴニストであるゴナックスは、GnRH受容体へのGnRHの結合を直接的にブロックすることによって、テストステロンの産生を低下させ、その結果、前立腺がんの増殖を抑制する仕組みです。一方、LHRHアゴニストを投与すると作用の仕組み上、一時的にテストステロンが増える時期があります。これをフレアアップ現象と呼びますが、テストステロンが増えるのは、進行がんの患者さんにとって非常にリスクが高いといえます。そのため、フレアアップ現象が起きないように、通常は抗アンドロゲン薬をまず飲み始めて、その後、LHRHアゴニストの注射を開始します。しかし、GnRHアンタゴニストのゴナックスを使うと、LHRHアゴニストでみられるようなフレアアップ現象は起こりません。あらかじめ抗アンドロゲン薬を飲む必要がないので、すばやい効果を期待できるのが特徴といえるでしょう。

◎リュープリンやゾラデックスとの違い

前立腺がんのホルモン治療薬には、ゴナックスの他に、リュープリンやゾラデックスという注射薬があります。リュープリンやゾラデックスはLHRHアゴニスト、ゴナックスはGnRHアンタゴニストに分類されます。よく似た名前ですが、そのメカニズムやメリットには違いがあります。

GnRHとは、「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」、LHRHは「黄体形成ホルモン放出ホルモン」のこと、アンタゴニストは「拮抗薬」、アゴニストは「作動薬」を意味します。ゾラデックス、リュープリンなどのLHRHアゴニストと、GnRHアンタゴニストは男性ホルモンであるテストステロンの放出を低下させ、がん細胞の増殖を抑えるという点では同様です。しかし、作用のメカニズムは異なります。LHRHアゴニストはLHRH受容体の働きを活性化させ、刺激を受けすぎることによって受容体が減り、結果的に男性ホルモンの放出を抑制するのですが、GnRHアンタゴニストは、GnRHが脳下垂体にある受容体に結合するのを直接ブロックして男性ホルモンの放出を抑えるという違いがあります。

起こり得る副作用とは

ゴナックスの承認時までの国内臨床試験では、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が83.5%に認められています。副作用の代表的なものとして、注射部位の疼痛(34.4%)・硬結(33.7%)・紅斑(32.2%)、ほてり(27.8%)などが挙げられ、重大な副作用としては、肺胞の壁や周辺に炎症が起こり、肺全体が固くなる間質性肺炎(0.7%)や、肝機能障害・糖尿病増悪(各0.4%)、心不全、血栓塞栓症が報告されています。

◎注射部位反応が起こる理由

リュープリンと比べて、ゴナックスの副作用で多かったのが注射部位反応です。ゴナックスの注射部位反応が最も発現する時期は初回投与の際で、その多くが注射後3日以内に起こっています。注射部位の疼痛・硬結・紅斑が起こる理由としては、針刺入における皮膚の傷害による痛みの他、皮下脂肪量に対する針刺入時の角度、注入される薬液と体温の差、注入後の薬液ゲル化による違和感などが考えられています。注射後に注射部位を揉まないようにという指示は絶対遵守ですが、心配な方は痛みなどを和らげる事前事後の処置について、担当医に相談してみるとよいでしょう。

◎どんな人に向いているか

リュープリン、ゾラデックスに比べ、PSAの低下率に有意性があり、またフレアアップ現象も起こらないので、進行性がんや骨転移をしている患者さんには有用性が高いといえます。しかし、リュープリン、ゾラデックスでは3ヵ月製剤があるのに対し、ゴナックスには1ヵ月製剤しかなく、その点においては患者さんの負担が大きいと言えます。

ゴナックスとカソデックスを併用して治療する

男性ホルモンは精巣だけでなく、副腎でも5%ほどつくられるため、ホルモン療法においてはGnRHアンタゴニスト(もしくはLHRHアゴニスト)に抗アンドロゲン薬を併用することがあります。
ホルモン療法は非常に有効性の高い治療法ですが、男性ホルモンが押さえられることで、骨密度の低下を招きます。すると腰痛や骨折等を引き起こしやすくなり、QOLが低下してしまうことも。ホルモン療法を開始される際には、同時に病的骨折や骨粗鬆症の対策についても医師と相談することで、治療後のQOLの維持も考えることが大切です。


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