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前立腺と男性ホルモンの関係


前立腺がんの治療法として男性ホルモンの分泌を下げるホルモン療法があることから、前立腺がんの原因は男性ホルモンだと勘違いされたり、男性ホルモンが多い人は前立腺がんになりやすいと思われている傾向があります。実際のところは少し違いますので詳しく解説していきます。

男性ホルモン

前立腺がんと男性ホルモン「テストステロン」

結果から申し上げると、前立腺がんの原因は男性ホルモン「テストステロン」ではありません。 たしかに、昔から男性ホルモンが前立腺がんに関係があると考えられてきました。前立腺がんはかつて、簡単にはみつけにくいがんでした。初期症状がほとんどないことから、早期発見が難しく、骨に転移するほど進行した状態になって、痛みが出て初めて気付くケースが大半だったのです。そんな中、生理学者で外科医のチャールズ・ハギンズ医師が、前立腺がん患者の睾丸を切除して男性ホルモンを下げると、がんの進行が治まることを突き止めました。この発見はがんが化学物質で抑制できることを示す初めての成果で、この研究により、ハギンズは1966年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。前立腺がんにはテストステロンのレセプターがあり、がんがテストステロンを栄養にして成長をしていることが解明されました。従って、睾丸を切除しテストステロンが出ないようにすると、栄養補給路を絶たれたがんは急速に衰弱してしまうのです。こうした性質から、「前立腺がんに男性ホルモンはよくない」という定説が誕生してしまったのです。

男性ホルモン「テストステロン」とは

テストステロンとは主に男性に多く分泌される男性ホルモンの一種で、男性の場合は精巣(睾丸)で作られ分泌されます。女性も男性よりは少ないですが、卵巣や副腎などで作られています。テストステロンは骨や筋肉の強度の維持、性欲や性機能の維持の他、血液を作ったり、動脈硬化やメタボリックシンドロームの予防など、役割が多彩です。また、男性にとっては内面的な「男らしさ」を形成することにも関係するホルモンとして重視されています。

ホルモン療法の効果と前立腺がん

前立腺がんはテストステロンで少しずつ大きくなります。だから睾丸を切除し、テストステロンが出ないようになると、がんは急速に衰弱していきます。ホルモン療法では脳からのテストステロン産生刺激をストップさせることで一時的に精巣でのテストステロン産生を抑えることが可能です。しかし、テストステロンを下げただけでは、前立腺がんは衰弱はするものの、完全に消滅することはありません。がんも生き残るのに必死ですので、そのうちテストステロンがなくても生きていけるようになっていくのです。男性ホルモンが前立腺がんの発生や増殖を促進していると考えられていた頃は、一律にテストステロンを低下させる治療が行われてきました。しかし最近は、がんが大きいか小さいか、転移の有無に加え、その人本来のテストステロンのレベルが高かったか低かったかを考慮して、治療法を選ぶようになってきています。

「いいがん」「悪いがん」とテストステロン

がんには「いいがん」と「悪いがん」の2種類があります。悪いがんは人の命を脅かすがん。いいがんは人の体の中で大きくなっても、特に悪さをしないがんです。実はテストステロンが低いと「悪いがん」になりやすいという報告もされています。

テストステロンが高いと前立腺がんになりやすい?

前立腺がん自体はテストステロンとは関係のないところで出来ることがわかってきました。がんが出来てから、テストステロンが関係してくるので、テストステロンが高い人が前立腺がんになりやすいというのは間違いです。

前立腺がん治療の歴史において発見された性質によって、誤った定説が生まれ、何かと悪者扱いされてきたテストステロンですが、前立腺がんになる原因とは少し違うことが理解できましたでしょうか?

ホルモン療法と副作用について

前立腺がんは男性ホルモン「テストステロン」で増殖するため、それを防ぐ「ホルモン療法」が選ばれることがあります。既にがんが転移をしている場合を除いて、安易にテストステロンを下げてしまうと、LOH症候群(男性更年期症状)となって、ほてりや肥満、頻尿をはじめとする合併症が生じかねません。元々テストステロンが高い人は血管がきれいで、錆びついていないので、テストステロンを下げる治療を短期間行ってもほとんど問題はないのですが、ホルモンレベルが低い人は、血管が傷んでいたり、高血圧や糖尿病を併発していることが多く、そういう場合は合併症が進行して、がん以外の病気が悪化してしまうこともあるので、その人にあった治療法を選択することが大切です。

内分泌療法(薬物療法)と去勢術

【前立腺がんのホルモン療法おもな治療薬】

分類名 働き 主な製品名 用い方 主な副作用
LH-RHアゴニスト 下垂体を刺激し女性ホルモンLHを活性化 ゾラデックス 皮下注射 フレアアップ現象、性機能障害、更年期障害様症状、骨粗しょう症
リュープリン 皮下注射
GnRHアンタゴニスト 下垂体の働きを抑え精巣からのテストステロンの分泌を抑制 ゴナックス 皮下注射 性機能障害、更年期障害様症状、骨粗しょう症
抗男性ホルモン薬 非ステロイド性 副腎由来の男性ホルモンの影響を抑制 カソデックス 内服 女性化乳房・乳房痛、肝機能障害
オダイン 内服
ステロイド性 プロスタール 内服 女性化乳房・乳房痛、性機能障害、脂質異常症、糖尿病の悪化

※フレアアップ現象とは・・・投与初期に一時的にテストステロンが上昇する現象。進行がんの場合、麻痺や手足のしびれなどが生じることがある。

心配される副作用と対策

テストステロンは男性らしさを保つ大切なホルモンです。テストステロンが低下すると男性ホルモンが抑えられることで性欲が低下し、精液の量も減ります。更年期障害のような症状に加え、勃起障害などの性機能障害が起こることもあります。また、筋力の衰えや骨がもろくなるという副作用が心配されます。ホルモン療法中は脂肪分の高い食事は控え、適度な運動を続けることが大切です。

副作用軽減と効果維持のための「間欠療法」

比較的進行している前立腺がんに対するホルモン療法では、治療開始後数年から10年くらいで、効き目が弱まってきます。これを「去勢抵抗性」といいます。薬の効果が現れている期間をできるだけ長くするため、薬の使用期間と中止期間を繰り返す「間欠療法」が注目されています。

テストステロンは健康長寿のバロメーター

前立腺がんの治療を行っていない方にとって、テストステロンは健康と長寿のバロメーターでもあります。近年、世界の地域ごとに5年、10年と長期的に経過をみる健康調査が行われています。ホルモンのレベルを四段階に分けて検証すると、一番高いグループの人は一番低いグループの人と比較して、脳梗塞や心筋梗塞などの血管系の病気になる割合が約50%も少なく、がんにかかる割合も約30%少なかったという統計データが出ています。

考え事をするシニア男性

前立腺がんの治療法として男性ホルモンの分泌を下げるホルモン療法があることから、勘違いされがちですが、テストステロン自体は前立腺がんの原因ではありません。また、比較的「いいがん」である場合も多いのです。前立腺がんの治療中でない人にとっては、ホルモンレベルが高いことは大きな病気になりにくく、長寿につながります。結果として、テストステロンが高い人は長生きする傾向にあるということになります。

 


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