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前立腺がんが骨転移したときの治療薬


前立腺がんが骨転移した際に使われる薬には、「ランマーク」「ゾメタ」「メタストロン」がありましたが、2016年3月に「ゾーフィゴ」が新たに承認されました。それぞれの治療薬の特徴や違い、副作用やどんな人に向いているのかを解説します。

注射器と薬

最も使いやすい「ランマーク」

「ランマーク」は2012年に製造承認された骨転移の標準治療薬で、骨吸収抑制タイプの注射薬です。4週間に1度のペースで上腕、大腿、腹部の皮下に投与します。ランマークは破骨細胞の生育に必要なRANKL(ランクル)という分子にピンポイントで結合し、破骨細胞による過剰な骨の破壊を抑える働きがあります。がん細胞が骨転移すると、ランクルの生成を促進し、骨を溶かしながら骨の中で栄養を得て増殖していくのですが、ランマークによりランクルの作用が抑えられると、がん細胞は骨から栄養を得られません。そのため、破骨細胞と骨芽細胞のバランスが正常化し、骨転移の進行が抑制されると考えられています。

◎副作用

骨吸収抑制剤であるランマークは、血液からカルシウムの移動が少なくなるため、特に注意すべき重大な副作用は、低カルシウム血症やあごの骨の壊死・骨髄炎です。血液中のカルシウム濃度が低くなり、低カルシウム血症になると、手足の震え、しびれ、けいれん、不整脈などが起こることがあります。また、あごの骨が炎症を起こし、歯肉の痛みや腫れ、炎症、歯がグラグラする、あごがしびれる、だるい感覚があるとされています。正確な原因はわかっていませんが、歯科治療を受けたことがある人は特に注意をした方がよいでしょう。その他の副作用としては、アナフィラキシーや大腿骨の骨折、蜂巣炎(ほうそうえん)などの皮膚感染症が挙げられています。気になる症状があれば、すぐに医師に相談しましょう。

◎向いている人

以下で紹介する「ゾメタ」での治療中に骨転移が悪化した場合や、骨転移が進行した状態で、骨関連事象のリスクが高い人はランマークを使用するといいでしょう。また、他に服用している薬が経口ホルモン薬であったり、外来でホルモン薬の注射をしたりしている人であれば、静脈に針を入れるゾメタより皮下注射であるランマークの方が利便性で選ばれることも多いです。

よく使われる「ゾメタ」

「ゾメタ」は「ランマーク」よりも古くから使用されてきた骨転移の標準治療薬で、4週間に1度のペースで点滴投与を行います。点滴時間は15~20分程度です。ゾメタは骨に対して高い親和性を示し、骨表面に吸着して、破骨細胞の機能障害やアポトーシス(自殺)へと誘導させ、破骨細胞による過剰な骨の破壊を抑える働きがあります。

◎副作用

主な副作用は、発熱、嘔気、けん怠感、頭痛、骨痛、関節痛等ですが、ランマークと同様、重要な副作用としてあごの骨の壊死・骨髄炎が挙げられます。また、点滴は15分以上かけて行うことが必須条件で、短時間で投与した場合には急性腎不全が発現した例が報告されています。

◎向いている人

皮下注射のランマークとは違い、ゾメタは点滴投与になります。静脈に針を入れなければいけないため、利便性で敬遠される場合もありますが、外来で抗がん剤の点滴を受けている場合は、15分プラスするだけですのでそれほど大きな負担ではありません。

放射線を使う「メタストロン」

がんが進行し骨転移により痛みが生じ始めると、患者さんのQOLの低下を招くため、疼痛緩和に対して行う治療が併用されるのが一般的です。メタストロン」は、ストロンチウム-89というβ線の放射線を出す物質を含んでおり、体内に入るとカルシウムと似た働きをします。これは骨に集まりやすく、骨転移部分では正常な骨よりも長くとどまり、その放射線によって疼痛を和らげるとされているのです。1回の投与で約3~6ヶ月間持続します。注射によって投与されるメタストロンに含まれる放射性のストロンチウム-89は、尿や便と一緒に排出されます。注射後、特に1週間以内は排尿や血液付着物の処理など、生活面でいくつかの注意が必要です。

◎副作用

大きな副作用は貧血です。また5~15%の患者において、投与後3日以内に一時的な疼痛増強が発現する場合があります。

◎向いている人

骨転移が進行して疼痛のコントロールが必要になってくると、モルヒネなどの医療用麻薬が使われるのが一般的なので、あまり使用される頻度は多くありません。しかし、麻薬によって腸の運動機能が低下し、他の疾患に影響が出ると量を増やせなくなるため、メタストロンを用いる場合があります。

生存期間を伸ばした「ゾーフィゴ」

「ゾーフィゴ」に含まれるラジウム-223は、α線を放出する放射性同位元素です。2013年にEUおよび米国で発売となり、2016年3月、日本で初めてα線を放出する放射性医薬品として、製造販売承認を取得しました。カルシウムと同様に骨塩複合体を形成するのが特徴で、特に骨転移巣にしぼって標的とするとされています。α線の放出によって、近接するがん細胞等に対してDNA二重鎖切断等を引き起こし、腫瘍増殖の抑制作用を部位特異的にもたらすのです。通常、成人には4週間に1度のペースで、最大6回まで、約1分間かけて緩やかに静脈内投与を行います。なお、臨床試験の結果、プラセボ(偽薬)群に対してゾーフィゴ群にて全生存期間の延長が認められています。

◎副作用

骨髄抑制が発現することがあるので、投与前に必ず血液学的検査を行います。貧血や血小板の減少、悪心、下痢なども副作用として挙げられています。

◎向いている人

「ゾーフィゴ」は、去勢抵抗性前立腺がんが骨転移した患者への効果が期待される放射性医薬品ですが、メタストロンに比べて放射線量が大きく、飛距離と崩壊時間が短いのが特徴です。周辺正常組織へのダメージを抑えながらも効果が大きい分、価格や管理上の問題において、対応できる病院が増えるかどうかが今後の課題となりそうです。

前立腺がんの治療においてまず選択されるのは、男性ホルモンの分泌や作用を抑制するホルモン療法や手術です。ホルモン療法はほとんどの前立腺がんに効き目がみられますが、次第に抵抗性を生じます。そして去勢抵抗性前立腺がんへと進行してしまうと、骨転移の割合が格段に増えるのです。骨転移は死亡のリスクやQOLに多大な影響を及ぼします。骨関連の症状を早期に診断し対策を講じることが、前立腺がん患者にとってとても重要なことだといえるでしょう。どのような治療法を選択するのか、身体の状態や以前の治療歴と併せて医師と相談することが大切です。


クルクミン