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前立腺摘出の手術後の勃起機能について


従来の手術では前立腺摘出手術を行えば勃起神経を犠牲にすることはやむを得ないことでした。しかしロボット支援手術であるタヴィンチの登場により、勃起機能を残せる手術法も出てきています。詳しく解説していきます。

くるみの画像

前立腺と勃起について

前立腺は大きさも形もくるみに似ています。そしてそれを取り囲むように勃起をコントロールする神経がタケノコの皮状に覆っています。これまでの手術では、前立腺がんを切除する際に周囲を覆っている神経を犠牲にすることは仕方がないことであるとされてきました。勃起をコントロールする神経は、前立腺皮膜のすぐ外側を通っているので、これを傷つけることなくがん組織だけをキレイに切除することは至難の業だったからです。ところが、「ダヴィンチ」とよばれる手術支援装置を使ったロボット手術の普及により、従来よりもはるかに精密かつ繊細な動きができるようになったのです。

勃起神経を残してがんだけを取り除く手術とは

従来の開放手術や腹腔鏡手術では勃起をコントロールする神経を残すことは難しかったため、今でも「前立腺がんの手術を受けると、二度と勃起できなくなる」と思っている人は少なくありません。しかし、近年外科手術の領域で広がっているはロボット支援法であれば、勃起をコントロールする神経を残すことも不可能でなくなりました。中でも最も注目されているのが「ダヴィンチ」とよばれる手術支援装置です。術者は手術台から離れたコンソールの中から、モニターの映像を見ながら、両手と両足を使い、遠隔操作で手術をします。手ぶれを制御し、患部を映すモニターの縮尺も自由に変更できるので、針の穴に糸を通すような繊細な作業も、感覚としては輪ゴムの穴にペンを通すくらいの縮尺に拡大して行うことができるようになりました。患者への肉体的な負担が少ない低侵襲の術式として導入された従来の腹腔鏡手術より、精密かつ繊細な動きが可能になった「ダヴィンチ」の登場は革命的な出来事でした。ミリ単位の操作をいとも簡単にこなすことができるようになり、手術の精度は格段に高まりました。

◎前立腺摘出後の勃起と射精について

ダヴィンチの登場により、射精を除く性機能を温存したまま、患者さんの肉体への負担を最小限に抑えて、前立腺がんの摘出手術を行うことが可能になってきました。前立腺の周囲は勃起機能に関係する神経を含む膜で覆われており、前立腺の先端には尿を貯めるのに必要な括約筋という筋肉があります。そのため、以前は前立腺摘出により射精や蓄尿などの男性の尊厳にかかわる機能を諦めなくてはならない可能性を考慮し、手術の対象年齢や生存見込みの年数などに暗黙の基準がありました。現在は尿の漏れや勃起障害が少なくなったことで、手術の対象年齢が大幅に高まりました。加えて、早期のがんで十分に勃起神経を残すことができるのであれば、術後に勃起障害が出たとしても、ESWL(体外衝撃波結石粉砕術)で陰茎の血管新生を促し、勃起機能の回復を見込めるまでになりました。ダヴィンチでも残せないのが射精機能です。前立腺の摘出はパイプカットをした時と同じ状況なので、射精はできなくなります。ただし、射精はできませんが「射精感」は残せます。通常、射精をする際は、前立腺は膀胱とつながっている方の弁を閉じ、精巣とつながっている方の弁を開きます。その結果、尿は出さずに精液が出る、という射精が起こるわけですが、前立腺がんの手術をするとこの弁機能がうまく働かなくなってしまいます。そうなると精液は体外へ発射されることなく、膀胱の方へ発射されることになります。これを「逆行性射精」といいますが、膀胱へ発射された精液は排尿時に一緒に体外に出ますので、特に体への悪影響はありません。

◎勃起神経温存手術

前立腺の周囲はタケノコの皮のように、勃起をコントロールする神経を含む筋肉の膜が覆っています。この筋膜ごと前立腺を摘除すると勃起障害(ED)が起きてしまいます。がんが前立腺内にとどまっていて、本人やパートナーの希望があれば、この筋膜を残して前立腺のみを摘除することにより、勃起神経を温存する手術法が選択されます。がんの位置や広がり方によってはこの筋膜全体を残すことが難しく、癌がない片方の筋膜だけ残すことが検討されます。当然のことながら、性機能が温存される確率は、筋膜をすべて残す方が可能性が高くなります。

勃起神経を残しても性機能が100%残るわけではない

勃起神経を温存して手術しても、勃起機能が以前同様に回復するとは必ずしも限りません。バイアグラなどの勃起補助薬を必要とすることがあります。また以前の勃起機能と比べて、加齢の影響があることを自覚していないこともあります。したがって手術前には勃起機能を調べることが一般的です。
なお放射線療法では前立腺と筋膜両方が照射されるのと、通常内分泌療法も併用されますので、通常2年以内にEDになります。したがって性機能があり初期の癌のかたでは神経温存手術療法が勧められます。


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