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前立腺肥大でもPSA値は高くなる?~新技術に期待~


前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA検査。がんの早期発見に有効な手段として活用されていますが、前立腺肥大など他の病気でも数値は上がってしまいます。この仕組み・理由について詳しく解説します。

右肩上がり

PSAと腫瘍マーカーの仕組み

PSAとは、prostate specific antigenの頭文字を取ったもので、日本語では前立腺特異抗原といいます。PSAは前立腺で作られるタンパク質で、もともとは精液の産生に関係しており、精子の運動性を高め受精しやすくする働きを持っています。一方でタンパク質分解酵素として、前立腺の細胞の中で炎症を起こしたり、がん化を促進したりするような働きもあります。PSAは前立腺疾患由来の物質ではなく、前立腺自体から分泌されるので、前立腺がん患者以外でも多少は血中に存在しますが前立腺がん患者は血液中のPSAの数値が高いこと、また治療を行うとPSA値が下がること、病気が進行するとPSA値が上がることから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして使われるようになりました。健康な人のPSAは60歳未満なら2.5ng/ml以下、60歳以上65歳未満なら3ng/ml以下、65歳以上で4ng/ml以下で、それぞれの数値を超えると前立腺がんの疑いがあり、精密検査の対象となります。

どうして前立腺肥大でもPSA値は上がってしまうの?

PSA値は前立腺肥大症や細菌感染による前立腺炎などの良性疾患においても上昇する他、加齢が原因で上昇することもあるため、4ng/ml以上でも一概にはがんとはいえません。では、なぜ前立腺肥大症や前立腺炎でも、PSA値は上がってしまうのでしょうか。通常、PSAは前立腺細胞から分泌され、精液に混じって尿道に噴出されます。その移動中は閉じた空間を流れているので、血液中に漏出する量は僅かです。

PSAが上がる仕組み

◎がんが原因でPSA値が上がる仕組み

正常組織では前立腺腺腔と毛細血管の間に基底細胞・基底膜からなる組織隔壁があるのですが、前立腺がんではこの基底細胞・基底膜がもろいため、細胞がつくるPSAが周囲の毛細血管に漏出することによって血液中のPSA値が上昇するとされています。

◎前立腺炎・前立腺肥大症が原因でPSA値が上がる仕組み

前立腺の上皮組織を傷つけ、また炎症のため、血管がもろい前立腺炎や、慢性的な炎症を起こしている状態の前立腺肥大症でもPSA値が上がります。

 

結果的に前立腺がん以外の要因でもPSA数値は上がってしまうので、数値だけでがんだと決めつけるのは早計です。PSA検査で数値がボーダーラインよりも高い場合は、MRIや針生検などの二次検査でがんの有無を精密に検査する必要があります。

今後の研究に期待!特定の糖鎖が結合したPSAだけを検査する方法

2015年9月、コニカミノルタと横浜市立大学の山下克子客員教授とが共同で、従来のPSA検査よりも信頼性の高い前立腺がんの検査技術を開発したことが明らかになりました。従来のPSA検査と同様に、血液を採取し前立腺から分泌されるPSA(前立腺特異抗原)というタンパク質を調べるのですが、新検査法ではがんになると増える特定の糖鎖が結合したPSAだけを測定することで、前立腺肥大症や前立腺炎など、がん以外の原因で陽性になる「偽陽性」の判定を減らすことに成功しました。
臨床研究では、がんではないのに従来のPSA検査法で陽性と判定された前立腺肥大症の31人の血液を検査したところ、22人を陰性と正しく識別しています。また、がんについての検査の感度はPSA検査と同じで、約9割のがんを発見することができますが、陽性との場合でも確定診断については従来通り前立腺に針を刺して細胞を採りがんの有無を調べる針生検を行う必要があります。
参照元:日本経済新聞電子版

新検査法の実用化は5年以内を目指すという段階なので、まだしばらくは従来のPSA検査が主流となりそうではあります。PSA検査には早期発見という一面もありますが、臨床的に重要ではないがんが発見されることで、過剰治療を受けることになり不利益をこうむっていると捉える一面もありますので、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で検査を受けることが大切です。ですが、少なくとも新検査法実用化の暁には、「偽陽性」の判定によって無用な針生検を受けなければならない人数が大幅に減ることになります。これは非常に喜ばしいことだといえるでしょう。


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